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スペースブロックハノイモデル

2003Complete

小嶋一浩

ハノイで建物をつくるのは日本と同じというわけにはいかない。設計のための調査を始めてから5年あまり、研究室の学生たちを中心に8ヶ月あまりの工事を終えてみての実感だ。そこには現場練りコンクリートの強度が150kg/㎡でも信用できないとかアルミのプレートというものがないなど考えられないような発見がいっぱいあった。
プロジェクトのターゲットは「地球環境」である。この、さほど大きくない建築が何故そんな大それたテーマと関係するのか説明が必要だ。詳細はコラボレーターである村上周三・曲渕英邦両氏の別稿の記述に譲るが、単純に言えば、高密度にかつエアコンを常時使わないで、高温多湿気候の東南アジアでどのような居住空間モデルの単位を組み立てられるかというのがテーマである。香港やシンガポールのような超高層が林立するのとは異なる姿のローエミッションなコンパクトシティモデルを提案したい。それには、特に「ハノイ36通り地区」のように、元々高密度に暮らす知恵を持っている場所の建替え(更新)モデルを実際に提案することの意味は大きい。現実のハノイではスプロールが始まりつつあるからなおさらだ。そんな時に、同じようなテーマで私たちが研究室で蓄積してきていた「香港モデル」「台北モデル」などのスペースブロックを用いたポーラスなモデルが研究チームに「発見」されることでこのプロジェクトが始まったのだ。
モデルは実験集合住宅である。具体的には36通りの敷地で、6家族30人(1000人/haから逆算)の居住を想定している。もともと本当に36通りで町屋のひとつを建て替えようとしていたから、家族の想定も具体的である。(36通り地区は今もダウンタウンの中心として賑わっていて、1つづつの町屋の権利関係も錯綜しているので調整がつかず最後は共同者の所属する大学のキャンパスの中に建てられることになったのが惜しまれる) 延床面積は400㎡(一人あたり13.3㎡)だが、内部の通風のための吹き抜けと外部のポーラスな立体的な中庭を合わせた施工床面積は1000㎡になる。ポーラス率(外部比率)は50%。これはこの地区の保存コードで、建蔽率(=中庭率)50%と決まったのを各階50%と読み替える合意を得たことによる。(こうしたことを進めるのに何度もいろいろな相手とワークショップを行なった)この大きな比率の外部空間は、実際のハノイの人々のアクティビティを調査して得られた様々な行為が外部に流出していることで根拠付けられている。
設計案は着工直前までベトナム瓦と現地の素材を採用していたが、敷地がホワイトモダニズムが支配的な大学キャンパスに決まった時点でPCルーバーを用いたフラットなダブルルーフと真っ白の空間に変更した。フラットルーフもフランス植民地時代の伝統として認められているのだ。実験集合住宅といえども実際の場所のコンテクストに応答したかったからだが、結果として外観はベトナム風には見えないかもしれない。これから、このモデルを実際にハノイの人々に投げかけて都市の作られ方に反映できるかどうかを問い掛けることになる。また、このモデルを手がかりに、いくつかの住宅の設計をベトナムで行なうことになるかもしれない。
プロジェクトは東京大学・ハノイ建設大学を始めとする多くのコラボレーターとの協同作業の成果である。

DATA

設計 小嶋一浩+東京理科大学小嶋研究室
+東京大学生産技術研究所 曲渕研究室
所在地 ベトナム ハノイ
用途 実験集合住宅
構造 RC造
規模 地上4階
敷地面積
建築面積
延床面積
271.27㎡
271.27㎡
466.71㎡

PHOTO

写真 大橋富夫
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