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Apartment

スペースブロック・ノザワ

2005Complete

CAt小嶋一浩赤松佳珠子

私たちは、一貫して賃貸集合住宅を「敷地の中における空間のボリュームの組み合わせ方の問題」として捉えてきた。その過程で生まれ、10年ほど前から使い始めたスペースブロック(以下SB)は、立体積み木によって空間を組み立て、できた空間に住む場所を与える、という従来のプランニングとは逆の手順で集合住宅を思考したものである。
このプロジェクトは、都内で初めてSBを用いた賃貸集合住宅として計画された。以前に大阪で展開したSBは、雑多な周辺環境に対してワイルドな存在感を示しながら同化する手法をとったが、閑静な住宅地である野沢では静かな存在感を示しながら佇む表情を見せる。
三方道路、南側隣地という敷地に対し、四方からセットバックし、2期完成時には建物がスクエアになる配置を選択した。建物の中心には共用部緩和を用いた吹き抜けの階段室を、その外側に2.6mモデュール×2スパンのSBで構成する15戸の住居を配した。さらに外周全体をダブルスキンのガラスルーバーでくるみ、各住戸の外縁に幅60cmの『縁側』のようなスペースを生み出した。これらのガラスルーバーが作り出す表情によって、一見しただけでは中身が推測できない。
集合住宅を「住宅」として設計するのではなく、住宅としての機能も満たしているが、別の用途かもしれない。といった、無定義にすら見える自由度の高い空間の方が、実は今の社会の中ではもっともリアルな集合住宅像なのではないだろうか。

ガラスルーバー・ダブルスキンのディテール
型板ガラスルーバーは、視線(プライバシー)・風・光の制御を兼ねていると同時に、空間の質を替える装置でもある。通常のサッシュとガラスルーバーの間にある空気は、不思議な存在感持って空間全体をくるんでいる。ルーバーを閉じると、室内はやわらかな拡散光をはらんだ、厚みを持った空気にすっぽりと包み込まれ、ルーバーを全開にすると一気に透明化した空気が流れ込み、外部と同化する。同じ場所にいながら、ルーバーガラスの開閉によってまったく異なった空間状態が瞬時に現れる。外部に対しては、部屋の点灯/消灯やルーバーの開閉、カーテンの有無などによって幾多にも表情を変えていく。水廻りとPSを外周部に配置した壁式構造を立体的に解析し、外周部の軸力をピン柱で持たせることによって外周部をほぼ完全に開口部のみにするといった新しい構造的解法によって、このガラスルーバーファサードは成り立っている。プロでもこの建築が壁式構造とは思わない。このガラスルーバーサッシュは、縦材2本でワンセット、間に挟むガラスによってそのワイド寸法がきまるという非常にプリミティブなもので、野田俊太郎氏とAng Gin Wah氏の助けを得てシンガポールから直接仕入れた。このプロジェクト進行時、日本のサッシメーカーの商品では、残念ながらこのようなシンプルなものは存在しない。しかし、そのプリミティブなサッシュを高い精度を出して仕上げるという技術は日本ならではであり、その両方の長所を引き出すことによって作り出されたファサードである。

DATA

所在地 東京都世田谷区
用途 集合住宅
構造 壁式RC造
規模 地上4階
敷地面積
建築面積
延床面積
584.48㎡
204.34㎡
693.85㎡

PHOTO

写真 上田宏

PUBLICATION

pen
新建築
BRUTUS
Casa BRUTUS
建築技術
138/162
2005年6月号/2006年1月号
2005年7月号
2006年2月号
2006年12月号

AWARD

2005年度グッドデザイン賞
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