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東京大学先端科学技術研究センター 3号館

2003Complete

C+A小嶋一浩赤松佳珠子

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東京大学駒場Ⅱキャンパスに建つ先端研の研究実験棟である。キャンパスのマスタープランと先行する建築群は原広司氏によるもので、非常にはっきりしたコンテクストがある敷地であった。私たちの計画では、配置と建物の輪郭、それに将来ユニバーシティ広場として整備されることになる東側のピロティ空間の断面寸法などはすべて既存の建築の寸法を踏襲している。

建物配置に関しても、北側にある既存樹木を生かすこと、時計台をはさんで対称配置となる生産研との壁面ラインを合わせることの重要性を考えた結果、北側壁面を敷地からセットバックした配置となった。しかし、与えられているプログラムにこれらの条件を重ね合わせると、原氏の建物よりスパンを広げる必要が生じる。また、先端研の研究室は短期間で入れ替わることがひとつの大きな特徴である。これらのことを重ね合わせた結果、与件として提示されていたSRCではなく、より空間的自由度の高いPC・PCaのワンウェイ工法を採用した。

我々が「黒」と呼んでいる部分は、東西の実験室ゾーンと樹木に面する北側の研究室ゾーンとにわかれており、その中でのフレキシビリティを確保するため、内部の壁を非耐力壁とし、移動可能な間仕切り壁としている。これらの間仕切り壁は、片廊下を形成するのではなく、可能な限り相互に対して開かれたしつらえとするため、ガラス面と壁面を組み合わせた壁面システムとしてメニューを作り、研究者に対してヒアリングを行った。

一方「白」と呼んでいる中央の大きなアトリウム空間は巨大なOAチャンバーとしての役割を持っている。ドラフトチャンバーを多く持つ実験棟では、外気を直接取り込むことによる結露が大きな問題となる。そのため、アトリウム内で一定の気温となった空気を廊下経由で研究室へ補給することで結露を防いでいる。また同時に、各研究室の関係をゆるやかにつなぐ立体的な“にわ”でもある。大学の研究施設であるこの建物は人口密度が低く、研究室・実験室以外の場所でのアクティビティがほとんど発生しない。そのような中で、立体的な“にわ”をはさんで上下階にいる研究者の気配をわずかに感じられるようにしている。この施設にとって、共用部分を“アクティビティが出会う場”として捉えたところで現実的ではない。そうした押し付けの空間ではなく自然に気配が共存する空間としての提案である。

DATA

所在地 東京都目黒区
用途 大学・研究施設
構造 RC造
規模 地上7階 地下1階
敷地面積
建築面積
延床面積
92,731.27㎡
1,300.53㎡
7,049.68㎡

PHOTO

写真 平井広行

PUBLICATION

GA JAPAN
新建築
建築文化
近代建築
58/62
2003年5月号
2003年8月号
2003年10月号

AWARD

2005年日本建築学会作品選集掲載
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