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MOOM

2011Complete

小嶋一浩

「MOOM」は、新しい膜構造の可能性を求めて研究室の学生たちとトライアンドエラーを繰り返して実現できた仮設の実験的な空間である。<離散的に配置された圧縮材>と<メンブレインの引張材>の組み合わせによるテンセグリティを用いた世界初の膜構造だ。膜構造には、これまで2つのタイプしかなかった。1つは、フレームが自立し、そのフレームに引張をかけながら膜を張るタイプ。もう1つは、空気膜構造(空気圧を利用して膜に張力をかけるもの)。「MOOM」は、膜がないと圧縮材である棒は地面に散らばってしまう。空気圧も使っていない。圧縮材を離散的に膜に固定し、端部の棒を支持してアーチ状にすると膜に引張力が生じて自立する(これは模型で簡単に再現できる)。 その結果として獲得された空間の内部に足を踏み入れると、直径25mmのアルミパイプは、落下してくるのではなく、逆に膜に引っ張られて上昇していくように感じられる。重力場ではなく浮力場が支配しているかのようによるシェルターが現れることで、未知の空間体験が得られる。
「MOOM」には特徴がいくつもある。まず超軽量であること。棒を入れる袋状の部分を含めて縫製してある膜材と棒、それに地面に定着するためのパイプとロープを用意すれば、サイトでアマチュアでも組み立てて大きな空間を獲得できること。柔らかい構造(変形しやすい)だが、棒の角度の調整などで空間を維持できること。撤収したあとに何も残さないこと等だ。今回は70人を超える学生たちで立ち上げたが、40人くらいでも可能だ。「MOOM」が立ち上がっていくプロセスには、建築が本来的に持っている祝祭性がある。

DATA

設計 東京理科大学小嶋一浩研究室 + 佐藤淳構造設計事務所 + 太陽工業
構造 膜構造
延床面積 146㎡

PHOTO

写真 堀田貞雄(*以外)

PUBLICATION

GA JAPAN
日経アーキテクチュア
新建築
JA
110
2011年4月25日号
2011年7月号
84WINTER,2012
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