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Commercial

焼肉 三國

2022Complete

CAn宇野享良知康晴

 名古屋市大須の2階建て焼肉店舗。同エリアにあるカジュアルな本店とアットホームなはなれの2店舗を1店舗にまとめる計画である。

小さな経済に配慮した時間のデザイン

 店主が高齢化した将来、2階を賃貸にすることも視野に入れ、垂直動線を外部化した。大須には小さな店舗やオフィスユーザーが多い。これらの小さな経済を踏まえて、スキップフロアのレベル差を活かし、小さな2店舗に貸すこともできるよう配慮した。2階トイレの外部化は屋上テラス客の利用だけでなく、複数店舗の共有トイレも見据えた提案である。

人を引き込むスリット

 大須は庶民的なコミュニティが色濃く残る場所でありながら、新参者が溶け込みやすい稀有な街である。庶民的だけど大人の隠れ家的な焼肉店だった「三國」は、外部からの視線を嫌う客層も多い。スキップフロアのズレ(隙間)を生かしたスリット状の窓から、賑わう気配や店内の雰囲気が伝わり、人々を誘い込むような表情だけを建築に与えた。

極小敷地の内部空間を最大化

 隣地と外壁の隙間を10cmとし、極小敷地で床面積を最大限確保する。外部階段の踊り場レベルを各層の床にしたスキップフロアのズレ(隙間)を通して、客席から斜め上や斜め下に視界が広がるような内部空間の最大化を試みた。敢えて、極小空間をスキップフロアにすることで領域を2分割し、客席相互の視線の交錯が少ない落ち着いた環境をつくりだしている。

稼働率を高める6つの客席

 スキップフロアの断面構成が各階の上下移動をコンパクト化し、店舗全体の一体感と階ごとに差別化した客席を両立させる。各階客席の性格を6つに分けて、様々なシチュエーションでの選択肢を増やし顧客ニーズにこたえ、店舗全体の稼働率を高める。

手を加えすぎない(手数の少ない)ラフな小屋

 三國の既存店舗は本店とハナレの2軒あり、共に昭和のレトロな雰囲気が残る心地よい空間である。新しい店舗にもその雰囲気を継承したいと考えた。2階建ての準耐火建築物(防火地域)として耐火被覆をなくし、化粧材を極力減らす。建築に手を加えすぎない素材を生かしたラフで簡素な小屋のように、懐かしくて新しい建築を実現しようと試みた。

流動的で新鮮な空気のデザイン

 自然換気による感染症対策を徹底する。1階は対角線上に窓を設け、客席に澱んだ空気が滞留しないよう配慮した。また、スキップフロアの隙間を通して、重力換気できる高窓を設けた。自然換気のできる窓は感染症対策の面で、視覚的にも来客に安心感をもたらす。

DATA

所在地 名古屋市中区大須
用途 店舗
構造 鉄骨造
規模 地上2階建
敷地面積
建築面積
延床面積
44.29㎡
35.43㎡
68.32㎡
構造 藤尾建築構造設計事務所
施工 株式会社アクシス

PHOTO

ToLoLo studio

PUBLICATION

建築ジャーナル 2024年12月号
architecturephoto architecturephoto 6/11
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