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Houses

KABUTO

2022Complete

CAn宇野享良知康晴

緑の丘に浮かぶ「KABUTO」

 建築の四隅にある開口上部の軒が角のように突き出し、黒の板金で覆われた切妻屋根の建築が、ひな壇造成された住宅地に現れる。この建築は、家族が安心して過ごせる大らかな空間を守る兜(KABUTO)が、斜面地の記憶を呼び起す緑の丘に浮かぶような住宅の提案である。
 敷地は名古屋市で最も標高の高い東谷山から連なる洪積層台地の丘陵地域であり、南下がりにひな壇造成された住宅地である。敷地の法的条件は、南・西道路に面した植栽帯確保(緑被率30%)と、壁面後退距離(南・西2m、北・東1m)、40%の建蔽率である。
 40%の建蔽率では、平屋で施主要望の床面積は確保できない。前述の緑被率、壁面後退距離、駐車場を敷地から除き、段差をもつ地形と、2つのレベルで接道する角地の特性が生かせる、上下段に跨る建物配置を選択した。
 段差のある地形を内部空間に取り込み、上段レベルを基準階(1階)とし、上下に半階ずつずれたスキップフロアの断面構成とした。上段レベルに駐車場を設けることで、バリアフリーのアプローチとし、室内は上下移動の少ない動線計画とすることで、親の訪問や将来的な施主の高齢化に配慮した。
 プライバシーを重視した閉じた住環境でも、町との関係性が希薄にならない両義性を持たせたいと考えた。具体的には、掘削土も活用した斜面状の盛土で、下段外壁の腰程度まで覆い緑化する。緑化された丘を、建物際まで他者が寄り付きづらい緩衝領域とすることで、町と住宅が直に向き合う関係性を創り出した。時には大きな窓からテラスや北庭に出て、住み手と近隣住民との交流が生まれるような、相互の距離感を大切にした。
 1階のダイニングキッチンとリビング、2階の子供スペースを切妻屋根で覆い、天井が高くて広いワンルームのような一体感をもたせ、訪問客に開放できる内部空間を最大化した。半地下階は、家事動線に配慮した水回りと収納、主寝室など、家族間でもプライバシー確保が必要とされる閉鎖的な空間を集約し、空間分割を最小限にとどめた。
所在地 愛知県名古屋市
用途 専用住宅
構造 木造
規模 地上2階
敷地面積
建築面積
延床面積
181.82㎡
71.20㎡
96.61㎡

PHOTO

Tololo studio
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