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HASE-BLDG.3

2020Complete

CAn宇野享

 立体的な路地空間が育むコミュニティ
名古屋市大須に建つHASE-BLDGの設計は、この建築で4つ目になる。店子全員を招いたパーティを開くなど、施主の人柄によるところが大きいが、この雑居ビルに入る店子たちは仲がいい。まるで路地空間にある店子同士のように親密な関係性が徐々に生まれてくる。そのような体験を通して、HASE-BLDG.3では、店子間の交流が生み出すアットホームな雰囲気が来訪者を引き込み、やがて建物全体がひとつのコミュニティに成長していくような場をつくりたいと考えた。
これまで設計した3棟のHASE-BLDG(8、1、3)には、共通の設計思想が5つある。1つ目は、建築の普遍的な価値観となる高い天井高と屋上テラスを確保する。2つ目は、大須の若い店子層が好む躯体剥き出しのラフな仕上げとする。3つ目は、店子の規模に応じて貸床面積を選択できる柔軟さを確保する。4つ目は、様々な用途に適応できる設備計画に配慮する。5つ目は、街のアイコンとしての役割を担い、大須に活気をもたらす建築を目指すことである。
HASE-BLDG.3は、各階を約4.5mの階高に設定した5階建ての雑居ビルである。各階の外部は2層、内部は2層または3層のスキップフロアとなっている。外部は踊り場とテラスが下階の庇を兼ねた立体的な回遊路となり、内部は層間竪穴区画の階段を設ければ、全フロアを上下移動できるシークエンシャルな建築にもなる。つまり、内部空間はスキップフロアを上下何層まで繋ぐか、隔てるかによって、貸床面積の幅広い選択肢が生まれることになる。
また、緑に覆われた建築にしたいという施主の要望を踏まえ、道に面したテラスや踊り場に小さな庭を設けた。小さな庭や鉢植えが四季折々に表情を変えて各階の店先を彩る。人工芝張りの階段に腰かけて談笑したり、テラスの水場を使いお茶を飲んだり、店子が思い思いにその場の使い方を楽しんでいる様子が人々を惹きつける。道行く人々が階段を上がってみたくなり、その先の空間に行ってみたくなるような、立体的な路地空間をもつ建築の提案である。

DATA

所在地 愛知県名古屋市
用途 オフィス
構造 SRC造
規模 地上5階
敷地面積
建築面積
延床面積
101.15㎡
80.16㎡
319.77㎡

PHOTO

写真 上田宏

AWARD

第6回名古屋まちなみデザイン賞

PUBLICATION

WEB architecturephoto
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