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HASE-BLDG.1

2016Complete

CAn宇野享

昭和と平成という異なる時代の境界


この建物は、愛知県名古屋市大須に建つRC造地上6階建ての賃貸ビルである。賃貸ビルは、街の栄枯盛衰の影響を直接受けやすいが、街の潜在的なポテンシャルを引き出すこともできる街の縮図のような建築だと考えている。大須には大須観音などの神社仏閣や、商店街、大須演芸場があり、生活と商業、娯楽が混在する庶民の町である。また、敷地は高速道路のある大きな道路を挟んで、栄という街にも面している。栄は、高級ブティックや飲食店の集中する商業の中心地である。ゆえに、この敷地は昭和の庶民的な商店街が残る大須という小さな街のスケール感と、平成の大資本が投下される栄という大きな街のスケール感を併せ持つ。その敷地特性を生かした昭和と平成という異なる時代の空気感を纏った建築により、大須の潜在的なポテンシャルを引き出したいと考えた。

異なるスケール感、業種が共存する荒々しいスケルトン


大須と栄の境界に建つ建築に入りそうなテナントを想定して、各階の平面・断面構成を決めた。大きな道に面した1、2階は、栄からの集客も期待した大きな商業系に見合った天井高4.3mのワンルームで、3−5階の基準階は、様々な業種に対応できる設備増設スペースと配管ルートを確保し、ワンルームを3室まで分割できる自由度の高い空間である。最上階はアトリエを想定し、基準階同様に空間を3分割できるが、部分的に天井高が5.4mある開放的な空間としている。さらに、すべての空間の床、壁、天井はコンクリート打ち放しで、配管や空調機器、照明も剥き出しの空間とした。コンクリートの骨太なスケルトンには様々な業種が混在するインテリアに負けない土木構築物のような力強さがある。ふたつの街の境界にある敷地特性や、様々な業種が混在してもひとつの建築としての統一感を与えるために導き出したのが、歪んだ升目の揺らぎ感があるファサードである。

アイキャッチのファサードと空間分割の補助線という2面性をもつ歪んだ升目


平面的、断面的にギザギザなテラスがつくりだす歪んだ升目のファサードは、商業系のテナントを誘致し、集客力に寄与する視覚的なインパクトがある。大通りを挟んだ栄から正対すると、規則正しい枡目が強調されたり、ギザギザなテラスの奥行き感が、建築の横顔をつくりだし、見る角度によって表情を変える。一方インテリアでは、升目状の壁が空間を小さく分割する間仕切壁の手掛かりとなる。歪んだ升目は、栄から人を導くアイキャッチとしてのファサードと、大須の小さなテナントを導く空間分割の補助線という2面性をもつ。フォルムとしての表情の豊かさだけでなく、将来的には分割されたテラスを手掛かりにして、集合住宅や、宿泊施設にコンバージョンするなど、街の変化に順応できる自由度の高い建築の骨格をつくりだせたのではないかと考えている。

小さな世界をつなぐ赤いループ


いつも私たちは敷地全体が様々なアクティビティに満ちた場をつくりだすことを目指している。昭和34年に建てられた旧HASE.BLDG.1の屋上にはビアガーデンがあり、当時の大須の生活に潤いと賑わいをもたらしていたそうである。オーナーの要望で、屋上にテナント間の交流を深めるプライベートガーデンをつくることになった。赤いループ状のカウンターを囲んで開かれるパーティーを重ねることで、すべてのテナントとオーナーの間に、コミュニティのような一体感が生まれ始めた。建築をつくることで、小さな世界がつながっていく瞬間に立ち会えるのは幸せである。テナントだけに開かれた屋上という少し閉じた公共空間の在り方が、向う三軒両隣的な交流や街を元気にするアクティビティの豊富化に繋がる可能性を感じている。

DATA

所在地 愛知県名古屋市
用途 オフィス
構造 RC造
規模 地上6階
敷地面積
建築面積
延床面積
253.70㎡
228.15㎡
1271.03㎡

PHOTO

写真 上田宏

PUBLICATION

WEB ArchDaily
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