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土生公民館

2021Complete

CAt赤松佳珠子大村真也

分節した屋根とボリュームによる集いの場

村上海賊の歴史や造船の町で知られる因島は、現在人口約2万人ほどとなり、少子高齢化が進む。2015年に閉校となり、体育館とグラウンドのみ地域施設として使われ続けている旧土生小学校跡地に、老朽化している公民館を移転するため、2018年にオープンプロポーザルで選定されて始まったプロジェクトである。

敷地は、海沿いの県道から少し入ったところに位置し、山を背にして傾斜地に民家が建ち並ぶ瀬戸内らしい風景が広がる。

ボリュームと屋根を町の民家に寄り添うスケールに分節させながらも、それらが寄り集まったような形態とし、それぞれに町並みからサンプリングした素材を用いることで、高低差のなかに屋根が重なり合いながら見え隠れする、土生の風景に溶け込むような建築を目指した。
民家サイズに分けたそれぞれのボリュームは、廊下や部屋という境界を持ちながらも、それらをできるだけ曖昧なものにしようと試みた。時にははっきりと分かれ、時にはゆるやかに繋がり、必要に応じて広さを変え、テラスと一体になって外になったり、伸び縮みしたりする。

ホールは、大ホールを中心にして、中・小ホール、ホール倉庫がそれぞれ3辺に位置し、各ホールとの間には境界をつくる可動間仕切りがある。それらを開け放つことで、大・中・小ホールが一体となり、扇形の座席配置で350席が収容できる1つの大きなホールとなり、全て閉じると(中ホールを更に2部屋に仕切る)、大きさが異なる4つの部屋を同時に使用することもできる。更に、エントランスロビーや、広場などとも連続的に使うことができるよう、多くの接続面をもつ多角形のホールとした。3つの空間が自在に変化し、ロビーや屋外ともつながる決まった形を持たない広場のような空間である。

広島県は2018年7月豪雨で甚大な被害を受け、後背に崖地のある本敷地も急傾斜地警戒区域の見直し対象となった。建物を敷地中心に再配置し、多角形のホールを中心に角度をもって配置された各ボリュームが街角や広場に向かってそれぞれの方向に顔を出し、温かみのある木の屋根が人々を迎え入れる。その屋根下の縁側空間は、目的的に訪れる人々だけでなく、グラウンドや多目的広場で遊ぶ子供たち、体育館利用者や縁側で井戸端会議をする人々など、あらゆる世代にとっての拠り所となる。

コロナ禍という、「人との関わり方」に戸惑いながら生活する日々を過ごしたからこそ大切だとわかった、縁側に座っておしゃべりを楽しむようなささやかな日常を支える場として、人々の生活に溶け込む集いの場となることを願っている。

DATA

所在地 広島県尾道市因島
用途 集会場(公民館)
構造 木造一部鉄骨造
規模 地上1階
敷地面積
建築面積
延床面積
2,991.08㎡
1,048.95㎡
954.68㎡
竣工 2021年6月

PUBLICATION

新建築
近代建築
建築ジャーナル
日経アーキテクチャー
2021年10月号
2021年10月号
2021年12月号
2021年12月9日号_コンパクト木造を解く

AWARD

2024年日本建築学会作品選奨

PHOTO

足袋井竜也
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