平日・休日ともに交通量の多い駒沢通りと、子どもたちの遊ぶ声が響く恵比寿公園に挟まれた敷地に、教会・住居・テナントオフィスからなる10階建ての複合建築を設計した。駒沢通りではテナントビルの建替えが各所で起きており、これからも増えていくのではないかと予想される。その中に布石を打つようにこのビルを建てることで、今後の風景のきっかけづくりになるような建築のあり方を目指した。
駒沢通りから1本道を入った所に恵比寿公園がある。公園との間の道を境に用途地域が変わり厳しくなる日影規制をクリアするため大きくえぐられたような形になる。意図せずできたこの大きなヴォイド空間やテナント階のバルコニーは、周囲の建物が背を向けたように建つ中、公園を自分たちの空間の延長としてとらえるきっかけとなる。夜になるとこのビルが煌々としているから尚更である。
一方で駒沢通りの振る舞いは、街区によって閉ざされてしまい通りからは気づきにくい公園の緑を通り側に運んでくることをイメージした緑のファサードとした。この緑化は南側の日差しを和らげるとともに、大通りとの間に隙間を持つ「ブリーズソレイユ」の役割を果たしている。両側に緑を携え風通しの良い内部空間は均質で閉塞的なオフィスとは「空気」が異なることを私達自身で体感している。
旧救世軍ビルから数えると20年以上の付き合いになるこの場所で、設計した建築とともに変化していく周辺環境や使われ方を身近で考察できる贅沢さを感じながら、この布石による余波が生まれるか見守っていきたい。