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Apartment

12のストゥッディオーロ

2009Complete

CAt小嶋一浩赤松佳珠子

東京・南麻布の懐深く、閑静な住宅街に、極小の「スゥトゥッディオーロ」がスタックされる。極小などとは大げさな、と思われるかもしれない。まずは数字をあげたほうがいいだろう。2棟ある。A棟は敷地28.2㎡・延床73.5㎡に6戸、B棟は敷地32.8㎡・延床77.9㎡に6戸。1棟が東京の小さな戸建て住宅くらいの規模である。各々に共用階段があり、5層に6戸を入れないと求められた与条件が解けないから、12戸中9戸は室内階段を持つ立体的なものとなった。私たちはかって「スペースブロック上新庄」で内法2,180mmのキューブを組み合わせて集合住宅を実現したことがあるが、そんな経験を持ってしても太刀打ちできないくらいに<小さい>のだ。

現代の都市のなかの積層する茶室だと考えることから始まった。京都に行っていくつかの茶室を訪れる。小さい空間にさらに仕切を設えることや開口の自在な取り方と反射面の素材によって現れる光による空間の拡張のしかたなどをその場所で体験しながら考える。ところが、設計を進め始めてすぐ、便器までむき出しにならざるをえないこの空間は接客空間ではなく個人の空間であることに思い至る。茶室は実際には比較的広いバックゾーンを伴っていて、客を迎える空間だけが縮小されているのである。茶室というよりは「方丈記」の縮小の美学か?究極の個人の空間。「市中の閑居」かもしれない。 「スゥトゥッディオーロ」などとイタリア語にしたのは、印刷術が発明されて個人が書籍を所蔵することが可能になったルネサンス期のベネチアあたりに現れた初源の書斎という意味を持たせたかったからである。

極小の空間で目の前に迫る壁面の中に余白を見出そうとすると壁のテクスチャーは粗面の掻き落としになる。家具ではなく<しつらえ>だけで成立するように通称「ガチャ柱」をRC壁面にピッチで通す。スイッチやインターホン、照明といった日常をうまく隠すことで距離が伸び縮みして知覚されるように空間を設計する。小さな(約4.5m角)フットプリント故に窓はいろいろな方向に確保でき光に満たされる。一見壁式構造にしか見えないが、実は4隅(B棟は5隅)に3角形の柱を仕込んで梁幅も壁厚と同じ150mmに納めたラーメン構造である。
現れたのは、全住戸を続けて体験した後では150㎡などという数字からは想像できない空間の拡がりを感じる不思議な建築なのである。

DATA

所在地 東京都港区
用途 共同住宅
構造 RC造(耐震壁付ラーメン構造)
規模 地上4階 地下1階 
敷地面積 
建築面積 
延床面積 
A棟:28.2㎡ B棟:32.8㎡
A棟:19.7㎡ B棟:19.7㎡
A棟:73.5㎡ B棟:77.9㎡

PHOTO

写真 上田宏

PUBLICATION

新建築
ELLE DECOR
日経アーキテクチュア
コンフォルト

書籍
2010年2月号
2010年3月号
2010年7月12日号
2010年12月号

集まって住もう(彰国社)
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